EAGLE VIEW

次世代GPS ゴルフナビ&レコーダー
「EAGLE VIEW(イーグルビュー)」

開発秘話

HOME > 開発秘話

開発秘話インタビュー

*

1990年。
世界初のGPSカーナビゲーションシステムを搭載した乗用車が発表された。マツダ「ユーノス・コスモ」である。

この瞬間に世界のドライビング事情が一変したと言っても過言ではない。このカーナビゲーションシステムを開発したのは三菱電機。そのハードウエアに地理情報を提供したのがゼンリン株式会社である。

ASAHI GOLF

Eagle View Project には、この当時のメンバーが再集結して開発が進められた。

林秀美氏(元株式会社ゼンリン カーナビプロジェクトリーダー 現株式会社ゼンリンデータコム会長)※写真右
平田誠一郎氏(元三菱電機 現マゼランシステムズジャパン 取締役)※写真左

*

今回、EAGLE VIEW の開発にあたり、 お二人に色々と興味深い話をお聞きする事が出来たのでここに紹介したい。

インタビュアー
内本浩史(現朝日ゴルフ用品株式会社代表取締役)

運命の出会い

◆ 内本 そもそも、お二人が仕事を共にするキッカケとは?
◆ 林 ある日、一本の電話がかかってきたんですよ。1985年のことです。
「三菱電機の平田です」って、「GPSを使ったナビの開発をしたいので協力して欲しい!」って。
いまでこそGPSはポピュラーな言葉になっていますが当時は何のことかわからない。
でもなんだか面白そうだったので「ああGPSナビですか!」っていかにも知っているような口調で受けてしまった。「もしあの時うちは興味ありません」ってお断りしていたらゼンリンのナビは無かったかも。
◆ 平田 当時は藁にもすがる思いだったんです。地図のデータが欲しくて欲しくて・・・
ですからイッキ捲くし立ててしまったんです。
◆ 林 でも、あの電話が地獄の始まりだったんですよね。(笑)
◆ 内本 地獄ですか?!(笑)
◆ 平田 ええ。技術的にも地獄なら経済的にも地獄。途方もない計画ですからね。
お金も必要ですし、日本中の地理データは必要になるし・・・。
もっとも、私は技術屋なので、お金の話は苦手です(笑)
◆ 林 私はすぐに弊社の大迫社長に開発の許可をもらいに行きました。
「クルマに小さなテレビが載って道案内をするナビと言うのを開発したいんですが・・・」と。
◆ 内本 それで、許可を取り付けたわけですね。
◆ 林 いえいえ。社長の開口一番が「そんなの売れんやろ」でした。
そこでひるむわけには行かないので「私も売れないとは思いますが研究開発としてやらせてください」とお願いして無理やりスタートさせました。
でも、詳細に検討を開始するとあまりにもお金がかかりそうな話になってしまって。三菱さん一社ではまかなえないし、うちも当時はそんなリスクを背負うほど余裕は無い。結局、三菱さんと手分けして業界に働きかけコンソーシアム(ナビゲーション研究会)を立ち上げフォーマットの共通化でリスクをシェアすることを考えました。

地獄の入り口

◆ 内本 なるほど、コンソーシアムの立上まで持っていかれたわけですね。
それが無かったらGPSカーナビが生まれてなかったんですね。
一方で、技術的な問題も生じる・・・そうするとまた費用が掛かる・・・というわけですね。
◆ 林 ええ。地図って球面を平面に書き写したものじゃないですか。GPSというのは地球の中の1点。
つまり、球体の中の点になるんです。点としてなら合うのですが、実際にはその点が移動していくわけですから、普通の地図では、絶対に合わないんですよ。
◆ 平田 その節はご苦労を掛けました(笑)
◆ 林 当時のゼンリンは測量技術屋としては素人。国土地理院や航測会社の方々に
色々と教えていただきました。例えばですが、コンピュータ上では同じ矩形で表現しても北海道の1秒と沖縄の1秒は距離に換算すると違うんですよ(緯度経度に関する秒)
◆ 内本 これ以上聞くと、文系の私の頭では理解できないと思います。(笑)
ところで、GPSとはどういう機構になっているのですか?

GPSって?

◆ 平田 位置を測定するのに3点測定という方法があるのはご存知ですよね。
簡単に言えば3点測定そのものなんですが、その方法を人工衛星を使って行うということです。
◆ 内本 というのは?
◆ 平田 人工衛星は時刻を叫びならが飛んでいると思ってもらったらいいんです。人工衛星には原子時計というのが搭載されていて、3000年に1秒程度の誤差しか生じない時計なんです。
それが何個も地球の上を飛んでいると思ってもらったらいいんです。
◆ 内本 なるほど、宇宙に何百億円もする高級時計が飛んでいると思ったらいいんですね?
◆ 平田 ええ。受信機の時刻校正用の衛星1つに3点測位用に3つの衛星の時刻を捕まえて測定するんです。あなたが地球のどこかに立っているとしますよね。その地点まで衛星間でごく僅かな時差が生じますよね。そこから衛星までの距離を逆算出来るわけですから、地球上の自分の位置を導き出すことが可能になるんです。
◆ 内本 判ったような判らないような。しかし、この小さな機械がすごく賢いものに思えてきました。(笑)
◆ 平田 EAGLE VIEW も時刻が表示されます。その時刻は原子時計並に正確な時間なんですよ。
というのも、衛星の時刻を出しているんですから(笑)

GOLF NAVI & RECORDER イーグルビュー登場!(EV-10)

1990年12月某日

◆ 内本 ところで、先ほどおっしゃっていた地図のポイントとGPSポイントをどうやって合わせたのですか?
◆ 林 一番困ったのはGPSが示す点と地図が合わないということです。というのも、どちらが正解なのか当時は判らないですよね。GPSが示す点が間違っているのか、それとも地図の位置が間違っているのか。どちらとも理論上は合っているはずなのに、モニターに示す点がずれてしまう。当時は開発途上です。正解が導き出せないんです。
◆ 平田 それに、宇宙に飛んでいる衛星の数が少ない。今でこそ30個近くの衛星が飛んでいるのですが、当時はわずか数個です。明け方の一瞬に衛星が頭上を通過する。だから、その一瞬を狙って実験するわけですから、肉体的にも大変でした。
◆ 林 あの時は大変だったですよね深夜に出かけて実験なんて日もあったし、
つい画面に注目しすぎて危うく事故を起こしかけたこともありました。
ところが1990年の12月某日にいきなりGPSの示す点と地図上の点が合致したんです。
◆ 平田 そうなんですよ。
でも、私は何も修正したつもりは無いんです。いきなりどちらもバッチリと合ったんですよ。
◆ 内本 それはどうしてです?
◆ 林 その何週間か後にある出来事が起きたんです。
◆ 内本 とは?
◆ 林 湾岸戦争です。91年の1月17日です。アメリカが衛星のスクランブルをその前に解除したんです。
◆ 内本 それで合致した?
◆ 林 ええ。当時はGPSは軍事目的でしたからアメリカが信号に暗号をかけていたんです。 テロへの利用を考えると当然と言えますよね。その後、クリントン時代の2000年5月にGPS技術は人類の発展に不可欠であるとし、スクランブルが完全に外されたんです。
◆ 平田 実は例の砂漠の嵐作戦で活躍したのが、私が現在勤める「マゼラン社」のGPSチップセットだったんです。米兵は砂漠の中で迷う事もあるので、各人が携帯用のGPSを持って歩いたんです。
EagleViewよりも大きいものですけど機能はずっとEVの方が上ですよ。(笑)
米軍からマゼラン社は表彰までされているんですよ。
◆ 内本 不思議な縁ですね。当時悪戦苦闘していたカーナビ開発が湾岸戦争の開始とともにいっきに動き出し、一方でスクランブルを解いた背景にはマゼラン社の機械があった。しかも、現在、平田さんは、マゼランシステムズジャパンで技術役員をされているんですからね。不思議な縁ですよね。
◆ 平田 本当に不思議なものです。
◆ 内本 そして、遂に実用化!どうでした?
◆ 林 発表したばかりのユーノスに乗って自宅に帰ったんです。
そして、息子を乗せてドライブに行ったんですよ。「お父さんが忙しかったのはこれを作ってたんだ」 ってね。そしたら息子が「すげー!かっこいい!」って言うんですよ。
勿論、ユーノスの事じゃないですよ。カーナビです。この時が一番嬉しかったかな。(笑)
◆ 内本 親父の面目躍如ですね。(笑)

Eagle Viewの開発

◆ 内本 ところで、今回のコンビ再結成の裏話を教えて下さい。(笑)
◆ 林 まるであの日の再現ですよ。平田さんから突然5年ぶりだったかな電話がありまして。
「マゼランジャパンの平田です・・・」っていつもの朴訥とした誠実な声でね。
◆ 平田 ははは。本当に当時の再現ですね。
◆ 林 ゴルフ場のデータが無いか?って聞かれましてね。
何に使うの?って聞いたらゴルフ用のGPSだ・・・って言うじゃないですか。
ナビのときと同様に最初はそんなもの必要かなぁ?って思ったんですよ。
◆ 平田 私はゴルフをしないので正直に言うと・・・どうなのかなあ?って思ってました。
◆ 林 そしたら、マゼランさんから1台の器械が送られてきましてね。現在のEVのプロトタイプです。私がラウンドするゴルフ場の位置データが入っているものでした。
◆ 内本 それでどう思われました?
◆ 林 これは面白い!!って思いましたね。ゴルフのスタイルが変わる!って直感的に思いました。
◆ 内本 ええ。ゴルフってつきつめると、距離と方向性を人間の感性でいかに合わせるか・・・
というスポーツですからね。
◆ 林 自分のドライバー飛距離なんて正確には判らなかった。それが正確に判る。
これだけでも十分に楽しめます。思ったより飛んでいなかったのが残念ですが(笑)
◆ 内本 それでこのプロジェクトに参加することに?
◆ 林 それだけならそうは思いませんが、わが社がナビの開発に関わるようになったきっかけを作ってくださった大恩人の平田さんの申し入れだったことが一番大きかった。しかも、情熱をかけて開発されている。面白い。僕も欲しいと思った。我々ができることならば何とか協力したいと思いました。 *
◆ 内本 林会長の使命感に火が点いたわけですね!
おかげで助かりました(笑)
◆ 林 ははは。本当は1打でもスコアを良くしたい...って
気持ちかもね。(笑)

Eagle Viewの今後

◆ 林 ところで、内本さんが考えるEVを取り巻く世界ってどんな世界です?
◆ 内本 EVはゴルフ用のGPSナビであるのと同時にゴルフを記録するツールだと思うんです。
当社は50年間ゴルフに関わる仕事をしてきましたが、その中で感じたことの一つとして「ゴルフは文化だ!」って言ってるんです。何百年も人を虜にするスポーツは、もはや文化そのものだ!って。
その文化を支え、発展させていくのが我々の使命の一つだ!!って。
◆ 林 その文化を支える事とEVがどう関係するんです?
◆ 内本 ゴルフは記録するスポーツだと思うんです。もし、スコアカードが生まれてなければ、これほどまでゴルフが流行ったか疑問です。スコアとか、パット数を書いて記録する。OBとか池に入れた記録も書き足す。すると、スコアカードを見てあの時の情景が浮かんでくる。
◆ 林 つまり、新しい記録ツールだと?それが文化に?
◆ 内本 ええ。EVを使えば、ショットの記録が可能になる。しかも、飛距離まで。
ゼンリンデータさんの協力の下でインターネット技術と連携して地図上に軌跡を表現する。
大それた言い方ですが、スコアカードが発明されて以来のゴルフ史上最大のエポックメーキングな事だと思うんです。
◆ 林 ははは。内本さんはマニアックですね。
◆ 内本 ええ。ゴルフはへたでもゴルフに賭ける部分では相当にマニアックです。でも、そんな人間が増えているのは事実です。技術の進歩で昔はマニアックと思われていたことが簡単に出来る。
◆ 平田 だから私たち技術者がいるんですよ。世の中が変わっていく。
◆ 内本 ええ。平田さんの技術でゴルフの楽しみ方が増やせるのですから、凄いことです。

超ゴルフ

◆ 林 他にも考えていることはあるんですか?
◆ 内本 この器械があれば、空間とか時間とか超越できる楽しみも生まれると思うんです。
◆ 林 例えば?
◆ 内本 ドラコンです。従来はコンペで争うか、ドラコン競技に出場するしか方法が無かった。
それが、性別や年齢、HCなどでセグメントを分けながら「今週のドラコン賞」なんて出来るんです。
そのうち、日本で最もドラコンの出易いゴルフ場・・・なんて生まれるかもしれません。
◆ 林 それは面白い(笑)
◆ 内本 他にも色々と風呂敷は広げられますが、一つ一つを地道に対処していくつもりです。
キーワードは「超」だと思うんです。Superという意味じゃなくて、Beyondという意味が強いかなぁ。
◆ 林 面白そうですね。
◆ 内本 ゼンリンさんやマゼランさんも宜しくお願いします。 お二人の熱い思いに負けないように頑張ります。
今日はありがとうございました。

インタビュー後記

*

林さんも平田さんも、ともに非常に魅力溢れる人物でした。

ある一つのことを自身の「執念」と「思い」でやり遂げられた方の凄みとでも言うのでしょう。オーラが溢れ出ていました。

ちなみに、林会長はパリダカールラリーで片山右京氏のナビゲーターとして完走された方でもあります。

一方、平田さんは現在も技術者として現役で頑張られています。現在は、屋内でのGPS受信感度の向上に対する技術研究を行われています。この技術は、携帯電話と融合する事で私たちの生活に近々にも密接に絡んでくる事になりそうです。

今回はまるでプロジェクトⅩそのものであり、EV開発を通しても本当に有意義な時間を過ごさせてもらっています。両氏に心から感謝致します。ありがとうございます。

2009年 朝日ゴルフ本社にて
林秀美氏(元ゼンリン株式会社カーナビプロジェクトリーダー 現株式会社ゼンリンデータコム会長)
平田誠一郎氏(元三菱電機 現マゼランシステムズジャパン 取締役)
内本浩史(現朝日ゴルフ用品株式会社代表取締役)